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『クイズマガジン21』は

クイズ作家・田中健一のオフィシャルサイトです。

Ultra Quiz アメリカ横断ウルトラクイズ体験記

   
【21】ミシシッピを越えて/アルバカーキ→ダラス→アトランタ

 9月13日。
 朝4時起きで空港へ。デルタの400便でダラスへ向かう。
 昨日はほとんど寝ていないので、離陸前から頭をガクッガクッさせながらウトウトしていると、隣のお姉さんが窓側と替わってあげようと言ってくれた。もたれてゆっくり眠りなさいということらしい。ありがたく好意に甘えて、その後は熟睡し、目が覚めるともう着陸態勢に入っていた。
 
 ダラス・フォートワース国際空港で乗り換え、アトランタへ。
 「ただいまミシシッピ川を越えるところです」というアナウンスがあったのはぼんやり覚えているのだが、僕は寝ぼけていて見逃してしまい、とても後悔している。
 先日の『アタック25』で、
「ミシシッピ川が注ぐ……」
「カリブ海!」(正解はメキシコ湾)
 と元気よく答えている大西さんは、「確かにカリブ海に注いどった。この目でしっかり確認した」と言い張っていた。

 世界有数の規模を誇るハーツフィールド・アトランタ国際空港では、ゲートからバゲッジクレイムまでの地下鉄に飛び乗ろうとした大西さんがドアに挟まれてしまう。
「『Do not enter』って言ってるでしょう!」
「『どうぞ乗ってええんちゃう』って聞こえたんや」
 本当に世話の焼けるおっさんだ。
 バゲッジクレイムでは、僕の荷物だけさっさと出てきて、他の挑戦者の荷物はなかなか出てこなかった。他のみんなはそろそろ帰れということか。

 今日のホテルはハイアット・リージェンシー。今まで泊まったホテルも決して悪くなかったが、ここは別格で、こんなラフな格好でいいのだろうかと思ってしまう。
 夕食は紅花で鉄板焼き。ツアコンの遠藤さんは自分が日本食好きということもあり、よく日本料理を食べさせてくれる。
 初めての一人部屋だったので、夜は遅くまでテレビで大リーグの試合を見ていた。


【22】そばかすが見えない/アトランタ・私がママよクイズ
 
 9月14日。
 今日は何をするのか見当がつかないが、アトランタということでやはりオリンピックに関係することだろうか。キャメロンパークでは飛行機問題ばかり出されて困ったが、今日もオリンピック問題ばかりだったらどうしよう。
 そんなことをバスの中で考えるうち、また目隠しをさせられ、降りてからも外す許可が下りずに、そのままスタッフの誘導で歩かされる。
 やがて足元の感触が芝に変わり、上り坂に。途中で汽笛のようなものは聞こえるし、一体ここはどこなんや!
 席に座ってからようやく目隠しを外すことが許されたが、眩しくて一瞬何も見えない。

「うしろをご覧ください。南北戦争、南軍の英雄が刻み込まれています」
 振り返ると、昨日買ったポストカードで見た景色がそこにあった。南北戦争の英雄3人が刻み込まれた世界最大の花崗岩、ストーンマウンテンだ。
 そして意表をつく荒井の登場。敗者復活はないと思っていただけに驚いたが、嬉しかった。クイズの面では厳しくなっても、旅の仲間は多い方がいい。

 次に優勝商品の発表。
 大西さんは山1つ、下村は車、僕は家付きの土地、鎌田はスタッフのパーカー、松井はスペースシャトルの搭乗券、荒井は「高吉さんのような」恋人。
 六人六様の希望を聞いた後に発表されたのは、ワインを造るブドウ畑!
 商品目当てで参加している訳ではないが、酒の飲めない僕は少しガッカリした。

「それでは早速、今日のクイズに参りましょう。キッズ、カムイン!」
 し、しまった。これが残っていたか。「私がママよクイズ」。子供の絵を見てお母さんを当てるクイズだ。
 この形式は僕には全然向いていない。観察力がないのか、勘が悪いのか、テレビで見ていて一発で当たった試しがないのだ。
 いや、それ以上に心配なことがある。僕は目が悪いのだ。視力はかなり前に測った時に0.5/0.3くらいだったから、今はもっと落ちているかもしれない。コンタクトをしていた時期もあったが、面倒になってやめてしまい、今はどうしても必要な時に眼鏡をかけるだけだ。その眼鏡も僕には似合わないので、この番組の収録中は一切使っていない。
 形式がわかったのは席についてから。開始までに一度カメラが止まるが、その時に眼鏡を取りにいくのは許されないだろう。仮に許されるとしても、この場の緊張した雰囲気を壊すのは嫌だ。仕方ない。このままでやってやる!

 クイズ開始。キャメロンパーク以来の早押しで、2ポイントでママさん当てに挑戦だ。
「ここアトランタで生まれ、60/年代……」
「マーチン・ルーサー・キング」(鎌田)
「『正直エイブ』という愛称がつけ/られた……」
「リンカーン」(荒井)
 みんなもっとゆっくり押そうよ~と思ってしまう。
 最初に2ポイントを取った鎌田は1番を指名。この絵が実にわかりやすく(これだけは僕でもわかったほど)、あっさりと抜けてしまう。

「今年から活動を開始した、救急車の中で/医師……」
「救急救命士」
「懐かしの曲『サーフィンUSA』を歌ったのはビーチ・ボーイズ。では、最近『サーフィン・JAPAN』を/歌った……」
「Mi-Ke」
 ようやく僕が目を覚まし、1度目の挑戦。女の子の方がわかりやすそうな気がして8番を指名。考える時間はかなりもらえるのだが、ぼんやりしてよくわからない。適当に指名するが当たらず、次の荒井にその8番を奪われてしまう。
 その後大西さんも2度目の挑戦で通過。あっという間に3人になってしまった。

 「乱丁」「潮目」と正解して、下村が外した5番を指名。
「この絵の点々は、そばかすだということです」
 福澤さんがヒントを出してくれるのはありがたいが、そのそばかすが僕には全然見えないのだ。
 今度は4択だったが、またはずす。

「旅行会社の営業所に必ずいなくてはならない/人が……」
「旅行業務取扱主任者」
 これは能勢さんにも褒めてもらった会心の押しで、さらに「北東」(鬼門の方角)を答えて3度目の挑戦。
 もう3択になった5番を指名するが、またはずす。
 そして次の漢字の問題では松井に押し負けてしまい、もはや2択になっていた5番をあっさり奪われる。
 ああ、また一からやり直しだ。今度はもう後がない。
 この時、今回の旅で初めて、僕は「負け」を意識した。
 空港から一人で帰る自分の姿が脳裏にちらつき、思わず勝者席の方を見ると、大西さんが「肩の力を抜け」というジェスチャーを送ってくれた。

 残るは2人。下村には絶対に挑戦権を与えてはならない。
 「サーカス」「アウンサン・スー・チー」と連取、4度目の挑戦は6番の女の子を指名。今度は最初から4択だが、またはずす。

 「ペレ」「運輸省」と答え、5度目の挑戦。
 もう誰でもいいと思い、3番のお母さんを指名。
「Are you my mother?」
「I surely am!」
 やったあ!
 なんだろう、この嬉しさは。こんな感激はドーム突破以来だ。
 間違えた2問を含め、ここで解答権を取った問題は12問。これだけボタンを押した経験が、次のチェックポイントで少しでも活かされるといいのだが。

 クイズ研以外では最後の生き残りだった下村がとうとう力尽きた。第一経済大学といえば知る人ぞ知るチャゲ&飛鳥の出身大学だが、今回の彼の活躍で多くの人がその名前を覚えたことだろう。
 
 勝利の喜びを噛みしめつつ、バスでアトランタ観光へ。
 CNNセンター、マーガレット・ミッチェルの生家、マーチン・ルーサー・キングの墓とまわり、最後に行ったのがワールド・オブ・コカコーラ。
 このコカコーラのパビリオンには、コカコーラの歴史、ビンやコマーシャルの変遷など、いろいろな展示があって楽しめたが、極めつけは「Tastes of the World」という試飲コーナーで、そこには世界各国で売られているコカコーラ社のドリンクが揃っていた。全種類を少しずつ飲んだので、どれがどんな味だったかあまり覚えていないのだが、「ファンタ・マンゴー」と「ファンタ・エキゾチック」だけは特に印象に残っている。

 21時発のデルタでマイアミへ飛び、空港のそばのシェラトン・リバーハウスにチェックインした。


【23】大西洋に吠える/マイアミ→キーウエスト

 9月15日。
 11時発のアメリカン・エアラインに乗り込む。小さなプロペラ機だ。
 眼下に広がるフロリダ・キーズを眺めていると、ほどなくキーウエストに到着。
 空港で簡単な昼食をとり、タクシーに分乗してマロリー・スクエアへ。
 そこからはコンクツアートレインという道路を走る列車で街をまわり、4週目の放送の冒頭に流れる挑戦者紹介の撮影に半日を費やした。久々に日本人観光客、特に新婚さんが目につく街だった。

 撮影は一人一人違う場所でするということで、トップバッターは松井。
 最初に行ったヘミングウェイの家は、彼が猫好きだったことから今でも猫だらけだ。
「俺も『親父と海』を書いて見るかにゃ~」
 猫を抱いた松井のセリフにみんな大笑い。僕は何をやらされるのか知らないが、これより恥ずかしいものはないだろう。

 その後、ルート1の標識で大西さん、サザンモーストポイント(本土最南端の地)で全員と鎌田、そしてビーチで僕と荒井と鎌田の2カット目を撮影した。
 ビーチでは僕が最初に呼ばれた。
「まず砂で山を作って、こう、いじけてるような感じで、それからつぶして……」
 福澤さんと萩原さんの熱心な「演技指導」はありがたかったが、誰や、こんなん考えたんは! 松井よりもっと恥ずかしいやん! しかも、後から合成してくれると言っていたゴジラの音声は入ってないし……。

 夜は2日続けて同室の荒井と遅くまで話をして起きていた。BEST9の全員と一度は同室になったが、荒井との時がいちばん夜更かしだった。