Ultra Quiz アメリカ横断ウルトラクイズ体験記 |
【18】頭がクラクラ/レイクパウエル・大声クイズ | ||||||||||||
9月10日。 今日の予想は本命大声、対抗バラマキだ。 バスで湖畔のワーウィープまで行き、船に乗り換え。 ドクターがくれた酔い止め薬を飲むと、猛烈な睡魔が襲ってきた。眠くならない薬だと言っていたのに。 乗り物に弱い大西さんは、いつも酔い止めをもらって飲んでいたが、その度にこんな睡魔と闘っていたのだろうか。こんなに眠くなるくらいなら酔った方がまだましだと思うのだが。 船は細長い湖をぐんぐん上流へ遡っていく。これがクイズの後なら景色をじっくり楽しめるのだが、これからクイズがあるとわかっているだけに気もそぞろ。 いつしか船が止まると、1機のヘリコプターが登場。中には福澤さんが乗っていて、爆音の中で「ジャストミート!」や「エイエイオー!」など散々言わせて去っていった。 今のは何やったんや? ヘリコプターから連想するものはただ一つだが。 ようやく睡魔から解放された頃、上陸。 「今日はこの大自然の中で思いのたけ絶叫していただきましょう。ここレイクパウエルで行うのは大声クイズだあ!」 船の上でいろいろ叫ばされたのはそのためだったのか。 ここは国立公園だから、石ころ一つ動かしてはいけないそうで(スタッフが守っていたとは思えないが)、スーツケースも転がせない。バラマキなんかできる場所ではなかったのだ。 一人一人絶叫フレーズが決められていく。 「田中君はお肉が食べられないそうですが、いつもは何を食べているのかな?」 「魚と野菜でなんとか食いつないでいます」 「でもハンバーガーは食べられるんだよね」 「はい、我がままなんです」 そんなやりとりの後で発表された言葉は……「高いお肉はだめなんだ」。 どうせ「ミニラ」という言葉が入るんだろうなと思っていた僕はほっとした。 今回のフレーズはよくできたものが多いと思うが、何といっても松井の「越後親父だオッペケペー」と溝渕の「これイイ!」が秀逸だろう。 いつものように練習開始。 ランプが8個にパワーアップされていて、なかなか最後までつかない。 余計なところにお金を使いやがって! 結果は早押しのように大西さんの圧勝とはいかず、みんなのハットが交互に立つ。 そんな中、いちばんパワフルだったのは下村で、一人ずつの練習の時に隣のランプまでついてしまい、大爆笑だった。 クイズ開始。ルールは3ポイント先取、お手付き・誤答は1回休み。 1問目、2問目と楽な問題が続くが、解答権が取れない。 「先に息を吸っておく」「マイクにできるだけ口を近づける」「AかOかEの母音を伸ばす」という必勝法が長戸本に載っていたのだが、僕はそんなことはすっかり忘れて無我夢中で叫んでいるだけだった。 大西さんはその点抜け目がなく、 「さとし、めぐみ、ひとみ、さとし、さとし~」 と最も言いやすい「さとし」を繰り返す作戦に出たが、スタッフに注意されて失敗。その後は下村をマークし、下村が先に叫んだ問題は捨てていたそうだ。 最後まで何の工夫もしなかった僕はかなり苦戦した。あと1つのランプがつかずに競り負けた問題がいくつあったことか。特に悔しかったのは大好きな椎名誠に関する問題を下村に持っていかれたことだ。 結果的には3抜けだったが、終わった時にはもう頭がクラクラ。大声クイズがこんなにハードなものだとは思わなかった。 必勝法に一つ付け加えるとすれば、「練習で手を抜くこと」だろうか。 勝者席でスタッフにもらったエビアンを飲みながら続きを観戦。 ずっと沈黙していた溝渕が声を出し始める。 「これイイこれイイこれイイこれイイこれイイ……」 これには挑戦者だけでなくスタッフも抱腹絶倒。面白すぎるぞ、溝渕! 印象に残った誤答をいくつか挙げてみよう。 「アルプス山脈最高峰で、フランス語で『白い山』という名前を持つ山は何?」 「エベレスト」(中島) 「人間のすい臓から分泌されるホルモンで、グリコーゲンの合成を促進し、分解を抑制する働きをするものといえば何?」 「酵素」(溝渕) 「企業の財政状態を示すバランスシート。日本語で言うと何?」 「コンパス」(中島) なんでやねん! 最後の1問はまさに大声クイズの醍醐味と言っていい勝負だった。わかったのがほぼ同時ならランプのつき方もほぼ同時で、見ていてハラハラしたが、声の大きい下村がタッチの差で中島を抑えた。 成田で同室になって以来とても仲の良かった中島が敗れてしまった。 昨日の晩、胃痙攣を起こしたので心配していたのだが、今日は大丈夫そうだったし、解答権もよく取っていた。ただ、間違いが多すぎた。 一緒に東海岸まで行こうって言っていたのに……。 「田中さん、優勝ですよ!」 別れ際のその言葉が、いつまでも耳から離れなかった。 午後は自由行動で、町をぶらついて過ごし、夜のバスでペイジを後にした。 |
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【19】「サボテンの州へ」/レイクパウエル→サンタフェ | ||||||||||||
9月11日。 猛烈な寒さで目を覚ますと、バスはチャマという小さな町に停まっていた。 喫茶店で朝食をとり、またバスに。日較差がかなり大きいようで、とにかく寒い。 ニューメキシコ州に入るとスペイン語の看板が目立ちはじめ、「エスパニョーラ」などという地名も現れる。 昼過ぎ、宮沢りえの写真集で一躍有名になった州都サンタフェに到着。州都とは言っても人口5万人足らずの小さな町だ。 ハイメサ・インにチェックイン。ロビーに見慣れない日本人女性が立っていたので、新しいスタッフが加わったのかなと思って会釈する。この人、実は番組スポットの撮影に来た笛吹雅子アナウンサーだということが後でわかったのだが、一時はその正体がかなり話題になり、二重音声クイズを警戒したりしてしまった。 KFCで昼食。コールスローサラダがとてもまずく、珍しく残す。 ホテルに戻り、クイズ研の会長・秋田に電話。これを最後に連絡を絶つことにする。 夜は中華料理。これが美味しいうえに食べきれないほどの量があり、大満足。 ホテルでは初めて大西さんと同室になり、廣田さんが貸してくれた(というより無理やり貸された)『現代用語の基礎知識』を見たりしながら過ごした。 |
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【20】宮沢りえ登場?/サンタフェ・新バラマキクイズ | ||||||||||||
9月12日。 今日こそバラマキのはずだ。地形的に最適だし、これ以上挑戦者が減ってからでは面白くない。という訳で、体調は完璧だが2本目のユンケルを飲んだ。 バスの中では全員目隠しをさせられ、どこをどう走ったのかわからないまま目的地へ。この目隠しは何を意味するのだろう。単にクイズ形式を隠すためなのか、それとも……。 誰からともなく、「宮沢りえが来ているのでは?」「レイギャルが宮沢りえか?」などという話で盛り上がる。「宮沢りえクイズ」なんかをやられたら目も当てられないが。 しばらく待たされ、目隠しをしたままバスを降ろされる。そして目隠しを取ると……。 そこはサンタフェ郊外のサンタクララ。標高2000メートル。だだっ広い。早押し機がない。何をやるかは一目瞭然だ。 プエブロ・インディアンの聖地ブラックメサ。その上から1機のヘリコプターが登場。 ただ、今までのバラマキとはどことなく雰囲気が違う。前方に大きな幕のようなものがあり、変な模様が描かれている。あれは何だろう? そして、膝当て、肘当て、ヘルメットに軍手(東急ハンズの値札付き)という完全武装をさせられ、プエブロ・インディアンの騎馬軍団が封筒を持って登場。 「まさか、あいつらから問題を奪い取るんちゃうやろなあ?」 そう思ったのは僕だけではあるまい。 発表された形式は2ヶ所に問題を撒くというもので、ヘリコプターから撒かれる近いゾーンは50%がハズレ。インディアンが撒く遠いゾーンは100%問題が入っている(「インディアン嘘つかない」という意味らしい)。 さあ、どうしよう? 近いゾーンの「50%ハズレ」というのはかなり痛い。ただ、遠いゾーンへ行っても問題が簡単になる訳ではないし、順番は抜かれる、疲れるとリスクが大きい。 ハズレも嫌だが、やはりバテるのがいちばん怖い。 結局、僕は近いゾーンだけで勝負することに決めた。 そんな形式よりもっと驚かされたのは、「ここで落ちるのは2人」という福澤さんの言葉だった。今残っているのは7人だから、ここで5人、アトランタ?で4人になって、マイアミ?で3人? おかしい。準決勝が3人になってしまう。でも今さら敗者復活はないだろう。それなら最初から6人通せばいいんだし。う~ん、わからない。 「位置について、用意、スタート!」 福澤さんの掛け声でクイズ開始。2ポイント先取で勝ち抜けだ。 テレビでは入れ替わっているが、実際に戻ってきたのは鎌田、大西さん、僕、溝渕、松井、下村、荒井の順だった。 1巡目。 鎌田、大西さんが続けて正解。僕の封筒にも問題が入っていた。 「黒船でやって来たペリーが、日本に初めて伝えた通信手段は何信号?」 これは知らなかったが、何信号とまで聞いてくれて助かった。 単に「通信手段は何?」だったら、電話、電報、伝書鳩、狼煙、花火、凧といろいろあって(そんなものまで思いつくな!)迷ったかもしれないが、信号といえばこれしかないだろう。 「モールス信号」 実は「手旗信号」もあったのだが、それには気付いていなかった。 2巡目。 鎌田は正解して1抜け。大西さんは忍者が使う「まきびし」を「鉄びし」と誤答し、僕の番に。 「文学者の名にちなんだ賞で、花巻市が作ったのは宮沢賢治賞。では、松江市が作ったのは何賞?」 「松」と聞こえた時に「松山市」かと思って一瞬喜んだが、松江市は知らない。でも松江と言われて思いつく文学者は一人しかいない。 「小泉八雲……」 その後何と言えばいいのかわからなかったが、ピンポンが鳴った。 結局、僕は2回とも近いゾーンへ行き、2回ともハズレを引かず、さらに2回とも知らないのに勘で答えられる問題だった。ラッキーとしか言いようがない。 ワンツーフィニッシュを飾った鎌田や僕はまったく疲れることなく、バラマキクイズを堪能したとは言い難いが、勝てば贅沢は言えない。 その後の展開を見ていると、みんな近いゾーンばかりへ行って、この企画は大失敗かと思われたが、松井を皮切りに何人かが遠いゾーンに挑戦した。 人数が少ないこともあって、あっさり勝負がつき、荒井と溝渕が無念の失格。 荒井は2回連続でハズレを引き、遠いゾーンへ行ってようやく1問正解。もう一度遠いゾーンへ行って帰ってくる途中でタイムアップとなってしまった。 「負けたのが悔しいというよりは、もっとみんなと旅をしたかったというのが一番のことですね」 彼のこの言葉はすべての挑戦者の気持ちを表していると言ってもいいのではないだろうか。しかし、この旅を最後まで見届けることができるのはたった一人なのだ。 そして、ドームの8問目、電池の長さの問題を太さと勘違いして100人に残った溝渕。なぜか決勝用のスーツを持ってきていた溝渕。 サンフランシスコで配られたウルトラチェックの「あなたはあといくつ勝ち進めると思いますか?」という質問に「あと3つ」と書き、「誰に勝つつもりや?」などと言われながらもしぶとく生き残り、本当にその通りになってしまった。 ちなみにこの場所はサボテンが多く、つまずくと危ないので、ドクターも含めてスタッフ総出で刈り取ったらしい。体調を崩す人がいないため暇なドクターは、ほとんど雑用係と化している。キャメロンパークでは飛行時間の計算もしていたし、ご苦労様だ。 ところで、日本に帰って『TVぴあ』を見ると、ここにはガラガラヘビもいたとか。聞いてないよ~。 芸術の町サンタフェを歩いてみたかったが、バスは宿泊地アルバカーキへ直行。 ところがアルバカーキの市内に入ってもなかなかホテルに着かず、同じ場所を何度も回っている。クイズ直後とはいえ、このような一つ一つの出来事に対して過剰ともいえるほど警戒する癖がついており、落ち着かない。 単にホテルの名前が変わっていてわからなかっただけで、杞憂に終わったが。 夕食は由緒のありそうな、とてもいい雰囲気のレストランで。 僕はパシフィックサーモンを食べた。 「アイ・ライク・ステーキ」を合言葉に肉ばかり食べまくっている大西さんを尻目に、僕は各地でいろんな魚が食べられることに幸せを感じていた。 夜は5人でUNO。 遊んでいる間は純粋にわいわい楽しんでいるが、もはや本土上陸直後の余裕はない。 それは他のみんなも同じはず。 次は誰が敗者になってもおかしくないのだから。 ⇒ |
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