Ultra Quiz アメリカ横断ウルトラクイズ体験記 |
【15】嘘やろ溝渕?/キャメロンパーク・飛行時間獲得クイズ | ||||||||||||
9月8日。 挑戦者を乗せたバスは小さな飛行場に着き、番号順に2機のセスナに分乗させられる。 何をやるのかわからないという緊張感と、自分はまだ落ちないだろうという自信が入り乱れた複雑な気分。ただ、15回の大石さんの例もあるから油断はできない。 停まったままで機内のシーンを撮影した後、再び待合室へ。 その後再び乗り込み、テイクオフ。大きな飛行機には慣れた僕も、セスナの揺れには耐えられず、酔ってしまう。 フラフラになった頃、民家が点在する小さな町に着陸。僕らを散々悩ませたキャメロンパークは、町民みんなが自家用飛行機を持っているという「飛行機オタクの町」だった。 やはりバラマキかと思ってジーンズを脱ぎ、短パン姿に。 しかし早押し機が見え、予想が外れたことを知る。 道路兼滑走路をGメン歩きで早押し機へ。 ここで行われるのは「飛行時間獲得クイズ」。 1問正解すると29人の町民から1人を選び、その人の生涯飛行時間が得点となる。一人前の飛行士と認められる2000時間獲得で勝ち抜けだ。 摂氏39度の炎天下でクイズ開始。 1問目の「リンドバーグ」を「サン・テグジュペリ」と間違えてしまい、早押し正解率100%の夢が崩れる。ちなみに放送上は、僕が誤答するシーンはたった4問。すべてニューヨークのものだ。 2問目以降、萎縮してなかなかボタンに手が出なくなる。 飛行機問題が続き、野上さんが2問連取するが、選んだ人が悪く届かない。 そして次の問題。 「英語ではベイポールトレイルと呼ばれ、非常に高い空の上で人工的に発生する雲は?」 「飛行機雲」 誰よりも早く反応したのは溝渕だった。 そして彼が選んだのは、僕も目をつけていた29番のおじさんで、2400時間! このあたりまで来れば、それぞれの実力はお互いにわかっているから、次は誰が危ないかも予想できる。ここではおそらく溝渕が……とみんなは思っていたはず。いや、本人は思っていなかったか? そんな溝渕の会心の1抜けで、勝負の行方がまったくわからなくなってしまった。 続いて鎌田が4700時間、松井が4500時間といずれも一発抜け。大した洞察力だ。 そして、次の問題。 「ドイツのリリエンタールによって実用化の研究が行われた、別名『滑空機』と呼ばれる航空機は何?」 「グライダー」 ようやく最初の正解。 第1・第2候補は既に取られてしまったので、第3候補、「ポルコ・ロッソ」を思い出させた25番の貫禄のあるおじさんを指名。 3970時間! 4抜けだ。 大西さん、荒井が続き、残るは3人。 中島がようやく正解して初めて女性を選んだが、たったの100時間。 次の問題も取り、「こうなったら全部女性でいきます」と宣言したのはいいが、この2人目も178時間。この調子だと何問必要かわからない。 「新撰組局長、近藤勇が愛用したことで有名な……」 「虎徹」 眠っていた下村が「パーソナル問題」で目を覚ます。みんな大ウケだ。 「自由ヶ丘1号、今治1号、難波1号などの種類がある、コンピューターの敵といえば何?」 「コンピューターウイルス」 今度はIBMの「パソコンとうちゃん」野上さんのパーソナル問題かと思われたが、意外にも反応せず、下村が答える。 「こんな問題で勝ち抜けても面白くないから、わざと押さんかったんとちゃうか?」 大西さんはそう言っていたが、本人に聞くと、本当に緊張して手が出なかったとか。 下村が抜け、野上さんと中島が残ってからは、中島の一方的な猛攻が始まり、7人目でようやく2000時間を超えた。 もう後がないという状況の中、女性だけでいくという方針を頑なに守り続けた中島は立派だと思う。つまらない意地を張って負けてしまったら元も子もないから、僕にはちょっと真似できないが、僕も頑固者だから彼の気持ちはよくわかる。 ちなみに、ゲストの中にはユナイテッドの機長で22000時間という超大物もいたが、誰にも指名されずに終わってしまった。 サンフランシスコで2抜け、今日もいきなり2問連取と好調だった僕らの「お父さん」野上さんが負けてしまった。頭の中が真っ白になってボタンが押せなかったのだと言う。 僕なんかよりよほど度胸がありそうなのに……。 ドーム通過最年長。いつも温厚で、とても頼りになる「お父さん」だった。 平均年齢はぐっと下がり、21.4歳。僕が上から2番目に。 できればもっと一緒に旅をしたい、でも一人ずつ蹴落としていかなければ自分の夢は達成できない。 そんな葛藤の中、旅は続く。 |
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【16】カジノで勝つ/サクラメント→ラスベガス | ||||||||||||
再びオールド・サクラメントをぶらつき、サクラメント空港21時30分発のアメリカ・ウエスト航空の行き先はラスベガス! 予想外の経由地にみんな大喜びだったが、別に僕らを喜ばせるためではなく、スタッフが遊びたいからで、ほぼ毎年ラスベガスには寄るそうだ。 ひと眠りして目を覚ますと、窓の外には不夜城ラスベガスの光の海が広がっていて、思わず息をのむ。陳腐な言い回しだが、まさに「宝石を散りばめたような」夜景だ。 きらびやかなホテル・サンレモに着いた時は23時を過ぎていたが、もちろん誰も寝ようとはしない。みんなカジノに直行だ。21歳未満は禁止だから、本当は下村、中島、荒井、溝渕の4人はダメなはずだが、何のお咎めもなし。荒井なんかどう見たって21には見えないが。 僕はまずスロットマシンに挑戦。5セント、25セント、1ドルの3種類があり、25セントを選んだが、一進一退をしているうちに20ドルがなくなった。 次にポーカーゲームに挑戦。これは配当が低く、勝っても全然儲からないので早々に撤退したが、隣のカップルはロイヤルストレートフラッシュを出して抱き合っていた。 ブラックジャックやルーレットにも興味があったが、すぐにお金がなくなりそうだし、Tシャツにジーンズというラフな格好では近寄りがたい雰囲気があった。 そんな僕が最後にやったのが5セントでできるKENO(キノ)というゲームだった。これは1から80までの数字から好きなものをいくつか選び、機械がランダムに選んだ20個の数字といくつか以上的中すればお金が戻ってくるというもの。 残っている挑戦者の番号を選んでやっていると、不思議とよく当たった。6つ選んで6つとも的中すると80ドルで、それが全部5セント硬貨で出てくるから1600枚。他の挑戦者に1ケースずつ配ってもまだたくさん余った。 機械が空になって係員を呼んだのが3回。最後は負けが込んで減ったが、それでも200ドル近くは勝ったし、スロットマシンとポーカーの分を引いても150ドルはプラスになった。カジノの雰囲気を楽しめただけでも十分なのに、お金も増えて言うことなしだ。 「ラスベガスで勝つと優勝でけへんで~」 そんな声がどこからか聞こえてきたが無視する。 部屋に戻ってベッドに入ったのは4時過ぎだった。 |
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【17】楽しいバスの旅/ラスベガス→レイクパウエル | ||||||||||||
9月9日。 7時過ぎに起き、ホテルでバイキング形式の朝食。 日本ではコンビニのパンや弁当で朝を済ませることが多い僕にとって、ホテルでの朝食は大きな楽しみの一つだった。トースト、スクランブルエッグ、ポテト、フルーツ……どれをとっても申し分なく美味しく、すぐにクイズをやりそうな日以外はいつも腹十ニ分目まで食べた。 15回はラスベガスで遊んだ翌日にモハベでバラマキをやったそうだが、今年は大丈夫。今日はレイクパウエルまで陸路での移動日だ。 ラスベガスの市街を抜け、広大なステップ地帯を貫くインターステート・ハイウェイ15号をバスは疾走する。時々小さな町が現れるほかはあまり変化のない景色が続くが、不思議と退屈しない。僕はそんな景色を目に焼き付けるように窓の外を眺め続けた。 ネバダ州に別れを告げ、アリゾナ州をかすめ、ユタ州に入ってセントジョージという町で休憩。日本と同じようなファミリーレストランに入る。違うのはやたらにボリュームがあることだ。 その後もバスは黙々と走り、人造湖レイクパウエルが姿を現した時には、もう陽が落ちかけていた。今日の宿は湖畔の小さな町ペイジのエコノ・ロッジ。今まで泊まってきた高級ホテルに比べるとかなり見劣りがする。二つのベッドの間にバスルームがあるという変わった構造の部屋で、同室者は下村。部屋割りはできるだけ「総当たり」になるように、うまくローテーションされている。 グレンキャニオンダムの工事中には一時的に賑わったこの町も、今は観光だけで成り立っているようで、道路沿いにひと通りの店は揃っているが、民家はあまり見当たらない。 夕食の帰りに土産物屋に入ると、見慣れないものがたくさんあって面白い。ここはアリゾナ州、インディアンの州だ。いろいろ気になるものがあったが、空気洗浄の作用があるという(ほんまかいな?)緑の石、何とかいう石のキーホルダー、それにTシャツとポストカードを買った。 「お土産を買うと落ちる」というジンクスも聞いたことがあるが、僕は全然気にしなかった。よく買ったのはTシャツとポストカード。Tシャツは各チェックポイントで、その地名が入ったものを、ポストカードは見た風景にできるだけ近いものを選んで買い揃えていった。 ロッジの近くにコインランドリーがあったので、松井、荒井、ツアコンの柳原さんと出かける。洗濯はできる時にしておかないと、次はいつになるかわからないのだ。 帰りはバラバラになり、珍しく一人で歩いていると、みすぼらしい格好のカップルに呼び止められた。 「Do you stay around here?」 「Yes」 「We are hungry. Give us some money, to buy something to eat」 もう真っ暗で周りに人影はない。厄介な連中につかまったなと思う。 「How much?」 「Two dollars」 なんだ、2ドルくらいなら、と思って財布を見ると、あいにく10ドル札と20ドル札しかなく、10ドル札を渡してお釣りを要求する。 「Change!」 「Five dollars, ok?」 結局5ドルあげることに。お釣りに渡す5ドルを持っているのに、なぜたった2ドルを欲しがったのか不可解だが、強盗ではなくてよかった。 この事件は緩みかけていた僕の緊張感を再び引き締めるきっかけとなった。そして、お釣りの5ドル札は勝手に「お守り」と決め、大事に持ち続けた。 何事もプラス思考が大切だ。 |
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